PRTRへの取り組み
 日化協では、1992年にパイロット調査を開始し、その後、調査物質を順次追加し、1998年からは284物質、2000年以降はPRTR法で指定された354 物質を合わせ、480物質を調査対象としています。
 2008年度のPRTR法指定物質(354 物質)の排出量は11,748 トンであり、2000年度比で75%削減しました。排出量の内訳は、大気への排出88.5%、水域への排出11.4%、土壌への排出0.1% 未満でした。
 また、日化協の自主調査物質(126物質:480物質のうち、法指定物質を除く)の排出量は35,041トンであり、2000年度比で37%削減しました。排出量の内訳は、大気への排出85.8%、水域への排出14.2%、土壌への排出0.1% 未満でした。会員各社では調査結果を基に、有害物質の漏洩防止、回収・リサイクル率の向上、代替物質への転換などを積極的に推進し、環境への排出量のさらなる削減に努めています。
 なお、PRTR法は一部改正され、2011年度届出分(2010年度排出実績)より、指定物質は現行の354物質から462物質に変更となりました。日化協では、これに対応して自主調査対象物質の見直し等を検討しています。
 
なお、主要な10物質の詳細データは、下記のホームページをご覧ください。
http://www.nikkakyo.org/organizations/jrcc/report/2009/data.html
有害大気汚染物質削減への取り組み
 日化協では、1995年度より2期にわたる自主管理計画を実行し、優先取り組み12物質の削減に取り組んできました。2001年度を初年度とする第2期計画では、2003年度削減目標平均30%に対し、基準年(1999年度)の12,393 トンから、2003年度実績で4,918トンとなり、60%の高い削減率を達成しました。
 2004年度以降は、PRTRへの取り組みの中で削減を進めており、2008年度は12物質合計で2,056トンとなり、1999年度対比で83%の削減を達成しました。
優先取り組み12物質とは
 中央環境審議会において有害大気汚染物質の中から「優先取り組み物質」22物質がリストアップされました。このうち発がんの可能性や、生産輸入量、環境中からの検出などを勘案して以下の12物質が選定されました。
  1)アクリロニトリル、2)アセトアルデヒド、3)エチレンオキサイド、4)塩化ビニルモノマー、5)クロロホルム、6)1,2-ジクロロエタン、7)ジクロロメタン、8)テトラクロロエチレン、9)トリクロロエチレン、10)1,3-ブタジエン、11)ベンゼン、12)ホルムアルデヒド
揮発性有機化合物(VOC)削減への取り組み
 2006年4月から施行された改正大気汚染防止法では揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制が実施されています。この法律では「法規制と事業者の自主的取り組みのベストミックス」の組み合わせで、2010年度までにVOCの大気排出量を2000年度(基準年)に対し3割程度削減し、光化学オキシダントの被害防止を図ることが決められています。
 日化協で会員の自主的な削減目標を積み上げた結果は、2010年度には基準年比51% 削減するものです。2008年度の調査結果では、日化協会員のVOC大気排出量は37,807トンで基準年に比べ58% 削減まで進展しています。生産量減少の影響もありますが、会員のVOC排出抑制設備の設置やプロセス改善の結果がこの数字に反映されていると考えられます。
揮発性有機化合物(VOC)とは
 揮発性を有し大気中でガス状となる有機化合物の総称です。主要なVOCは、塗料、印刷インキ、接着剤、洗浄剤などに有機溶剤として使用されています。具体的にはトルエン、キシレン、酢酸エチルなど約200種類の物質があります。
 
会員の取り組み事例

ベンゼン、ブタジエンの排出削減

宇部興産(株)

ブタジエンの排ガス燃焼設備

 UBEグループでは、有害大気汚染12 物質のうち、ベンゼン、ブタジエン、アクリロニトリル、1,2- ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタンの6物質を取り扱っています。特に有害性の懸念のあるベンゼン、ブタジエンについては徹底的に排出削減を進めた結果、それぞれ1995 年比で98%、91%の削減を達成しました。削減に大きく寄与した要因は、ベンゼンでは排出口のクローズド化および他溶媒への転換であり、ブタジエンでは、排ガス燃焼設備設置による削減です。

VOCの分解浄化

東ソー(株)

原位置混合処理

 東ソーが開発・販売展開しているVOC分解剤「MA-W200」、「MA-W100」は高い還元分解能と速効性があり、低温における反応性や持続性にも優れ、汚染土壌の浄化推進に寄与しています。高濃度に汚染された土壌・地下水の短期間での分解浄化を可能としただけでなく、原位置浄化に適し、少量添加で有効であるため、土壌に与える影響が極めて少なく、環境負荷の低減にも貢献しています。

 
大気汚染・水質汚濁防止への取り組み

 国内化学工業各社は、大気汚染物質や水質汚濁物質の排出量を大幅に削減してきました。中でも、JRCC会員は法規制値より厳しい自主管理基準を設定して自治体との協定を遵守するのはもちろんのこと、さらなる排出量の削減に取り組んでいます。排出量は年々減少し、また排出原単位についても着実に改善しています。
 
棒グラフ内の数字はデータ提出会社数
排出原単位:会員の事業分野が多岐にわたり同一の生産量単位で表せないため、売上高(百万円)当たりの指標とした。
土壌汚染・地下水汚染について
 JRCC会員各社では土壌汚染について、自主的または土壌汚染対策法に基づく調査・対策を進めています。アンケートに回答のあった91社のうち、2008年度に土壌・地下水の汚染調査を実施したのは46社の91ヵ所でした。このうち25社の46ヵ所で基準値を超えた汚染が発見されました。調査の実施理由については、自主的なものが72%と最も多く、法または条例に基づく調査は28%でした。また、調査対象物質については、法に定められた物質以外も調査した例が19件ありました。
 2008年度には、過去に発見された汚染を含め、32社の50ヵ所で対策を実施しました。掘削除去以外にも、原位置抽出、封じ込め、原位置分解など種々の方法で対策を行っています。
PCBについて
 アンケートへの回答89社のうち79 社(89%)が、PCB廃棄物(PCBまたはPCBを含有する機器等の廃棄物)を保管しています。国によるPCBの処理の体制が整ったことにより、2008年度中にPCBの処理を一部実施した会員は、2007年度の17社から22社に増加しましたが、処理が全て完了した会員はまだありませんでした。
 「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」では保管・処分の状況を都道府県知事に届け出るとともに法施行日(2001年7月15日)から15年以内にPCB廃棄物を処分することを義務付けており、今後とも行政の指導の下、着実に処理を進めていきます。
会員の自己評価
環境保全
 全体的に「要整備」や「整備中」が減少し「十分満足」のレベルが増えています。教育・訓練、コミュニケーション、運用管理の項目に対してチェックリストでは多様な活動(例えばコミュニケーションの「廃棄物や化学物質の排出に関する情報」や運用管理の設計・開発や調達など)が求められており、各社での取り組みの幅が拡がってきていることがうかがえます。