JRCCでは、化学物質の自主的な排出削減に取り組んでいます。
 
PRTRへの取り組み
 日化協では、1992年に諸外国のPRTR制度を調査し、国内でも13物質のパイロット調査を開始しました。1994年に調査指針と算定要領を定め本格的な調査を開始し、経済産業省を通じて結果を公表しました。その後、調査対象物質を順次追加し、1998年からは284物質、2000年以降はPRTR法で指定された354物質を合わせ、480物質を調査対象としています。
 日化協会員におけるPRTR法指定物質および日化協の自主的な調査物質の2000〜2006年度の排出量を図示します。
 2006年度のPRTR法指定物質(354物質)の排出環境保全量は18,829トンであり、2000年度比で59%削減しました。排出量の内訳は、大気への排出90%、水域への排出10%、土壌への排出0.1% 未満でした。
 また、日化協の自主調査物質(126物質:480物質のうち、法指定物質を除く)の排出量は、33,855トンであり、2000年度比で39% 削減しました。排出量の内訳は、大気への排出83%、水域への排出17%、土壌への排出0.1% 未満でした。
 会員各社では調査結果をもとに、有害物質の漏洩防止、回収・リサイクル率の向上、代替物質への転換などを積極的に推進し、環境への排出量のさらなる削減に努めています。
 
なお、主要な10物質の詳細データは、下記のホームページに掲載しています。
http://www.nikkakyo.org/organizations/jrcc/report/2007/data.html
有害大気汚染物質削減への取り組み
 日化協では、1995年度より2期にわたる自主管理計画を実行し、優先取り組み12物質の削減に取り組んできました。2001年度を初年度とする第2期計画では、2003年度削減目標平均30%に対し、基準年(1999 年)の10,482トンから、2003年度実績で4,080トンとなり、61%の高い削減率を達成しました。
 2004年度以降の優先取り組み12物質については、PRTRへの取り組みの中で削減を進めており、2006年度は12物質合計で3,595トンとなり、さらなる削減を進めています。
優先取り組み12物質とは
 中央環境審議会において有害大気汚染物質の中から「優先取り組み物質」22物質がリストアップされました。このうち発がんの可能性や、生産輸入量、環境中からの検出などを勘案して以下の12物質が選定されました。
  1)アクリロニトリル、2)アセトアルデヒド、3)エチレンオキサイド、4)塩化ビニルモノマー、5)クロロホルム、6)1,2-ジクロロエタン、7)ジクロロメタン、8)テトラクロロエチレン、9)トリクロロエチレン、10)1,3-ブタジエン、11)ベンゼン、12)ホルムアルデヒド
揮発性有機化合物(VOC)削減への取り組み
 2006年4月から施行された大気汚染防止法では揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制が規定されています。この法律では「法規制と事業者の自主的取り組みのベストミックス」により、2010年度までにVOCの大気排出量を2000年度(基準年)に対し3割程度削減し、光化学オキシダントの被害防止を図ることが決められています。
 日化協で会員の自主的な削減目標を積み上げた結果は、2010年度には2000年度比51%削減するものです。2006年度の調査結果では、日化協会員のVOC大気排出量は50,094トンで基準年に比べ44%削減まで進展しています。会員のVOC排出抑制設備の設置やプロセス改善の結果がこの数字に反映されていると考えられます。
揮発性有機化合物(VOC)とは
 揮発性を有し大気中でガス状となる有機化合物の総称です。主要なVOCは、塗料、印刷インキ、接着剤、洗浄剤などに有機溶剤として使用されています。具体的にはトルエン、キシレン、酢酸エチルなど約200種類の物質があります。
 
会員の取り組み事例
設備の改造による排出削減
住友化学(株)
 千葉工場では、化学物質(PRTR対象物質やVOC等)の環境への排出削減対策を計画的に進めています。
 PRTR対象物質の中で最も排出量の多い酢酸ビニルについては2006年度に実施したエチレン・酢酸ビニルエマルジョンプラントの排ガスをフレアースタック※で焼却処理する設備化に次いで、ポリエチレンプラントからの排ガスをボイラー設備で処理できるよう改造を進めており、2008年2月に完成する見込みです。これらの対策によって酢酸ビニルの大気への排出量は2002年度比で約70%削減される見込みです。
 VOCを貯蔵するタンクには、内部に浮き屋根を設置し揮発量を抑制する対策を講じます。また、合成ゴムプラントの乾燥設備からの排ガスを蓄熱式燃焼装置で処理するなどの対策を実施して大気排出量を削減する取り組みを展開しています。これらの対策によってVOC排出量を2000年度比で2010年までに約30%削減できる見込みです。
※フレアースタック: プラントで発生するガスを燃やして安全な状態で大気に放出する設備
 
大気汚染・水質汚濁防止への取り組み

 これまでに、国内化学工業各社は、公害防止の観点から大気汚染物質や水質汚濁物質の排出量を大幅に削減してきました。中でもJRCC会員各社は1995年以降、法規制よりさらに厳しい自主管理基準を設定して、自治体との協定を遵守するのはもちろんのこと、さらなる排出量の削減に取り組んでいます。
 いずれも基準年に対して大幅な削減となっています。
 
※棒グラフ内の数字はデータ提出会社数
※排出原単位:会員の事業分野が多岐にわたり同一の生産量単位で表せないため、売上高(百万円)当たりの指標とした。
※全りん、全窒素は2001年度よりデータ収集開始
土壌・地下汚染への取り組み
 JRCC会員各社では土壌汚染対策法に基づく、または自主的な調査・対策を進めています。
 アンケートに回答のあった87社のうち、2006年度に土壌・地下水の汚染調査を実施したのは45社の計87ヵ所でした。このうち21社の計29ヵ所で基準値を超えた汚染が発見されました。
 調査の実施理由については、自主的なものが82%と最も多く、法または条例に基づく調査は27%でした。また、調査対象物質については、法に定められた物質以外も調査した例が16件ありました。
 2006年度には、過去に発見された汚染を含め、37社の計55ヵ所で対策を実施しました。掘削除去以外にも原位置抽出、封じ込め、原位置分解など種々の方法で対策を推進中です。
PCBについて
 アンケートへの回答89社のうち80社(89%)が、PCB廃棄物(PCBまたはPCBを含有する機器等の廃棄物)を保管しています。
 2006年度中にPCBの処理を実施した会員は昨年より増加し9社でした。国によるPCBの処理事業も進んでおり、処理を実施する会員も増加すると思われます。
会員の自己評価
環境保全
 全体の傾向は前年とほぼ同じですが、「要整備」は減少傾向です。
  「整備中」が多い項目は、チェックリストが要求する多岐・多様な取り組みの全てはカバーできていないと考えられます。(計画や教育・訓練ではチェックリストが求める項目が多い、コミュニケーションでは対象を「廃棄物や化学物質の排出に関する情報」と具体的に指定、運用管理では設計・開発や調達など幅広い活動が求められている、など)